PT転職コラム

理学療法士は辞める人が多い?|なぜ女性ばかりの職場は疲れるのか

理学療法士の離職率は医療機関で10.2%となっています。

この数字からも分かるように、理学療法士は早期に辞めてしまう人が少なくありません。

国家資格まで取得したのに、なぜ辞めてしまうのか?

そこには、外からは見えにくい“医療現場ならではの構造的な問題”が潜んでいます。

この記事では、理学療法士を辞める人が多い実態を明らかにするとともに、転職相談でよく聞かれる「女性職場での人間関係の疲れ」にも触れて解説します。

理学療法士が辞める人が多い理由|給与や労働環境の問題

理学療法士を辞める人が多い理由は、給与や労働環境の問題が関係しています。

離職原因①給与が低い・昇給が少ない

離職率が高い最大の理由は、給与水準の低さと昇給の少なさです。

以下のデータを見ると、他の医療職との格差が明確に表れています。

職種 平均年収 理学療法士との差額
薬剤師 543万円 +123万円
診療放射線技師 500万円 +120万円
臨床検査技師 468万円 +48万円
看護師 469万円 +49万円
理学療法士 420万円 基準

出典:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」

給与が上がらない構造的な問題

理学療法士の給与が他の医療職より低い理由には、以下のような構造的な問題があります。

  • 診療報酬の制限: 1単位20分で算定され、経験の差が報酬に反映されない
  • 昇給率の低さ: 年間昇給額は平均5,000円程度と非常に少ない
  • 夜勤手当の有無: 看護師のような夜勤手当がほとんどない

年間5,000円という昇給では、長期的な生活設計が困難になります。

以下の記事では、実際に理学療法士の収入で生活していけるのか現実的な生活実態を詳しく解説しています。

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離職原因②労働環境の厳しさ

給与面だけでなく、労働環境にも多くの問題があります。

業務負担の問題

  • サービス残業の常態化(治療計画作成、報告書作成)
  • 厳しいノルマ(治療単位数、訪問件数)
  • 休日の強制研修や勉強会

人間関係のストレス

  • 多職種との複雑な連携(特に看護師主導の職場環境)
  • 厳格な上下関係と専門職間の力関係
  • 閉鎖的な医療現場での派閥やグループ形成
  • 女性の多い職場特有の人間関係の難しさ

離職原因③医療現場特有の人間関係

多くの理学療法士が「人間関係に疲れた」と感じてしまうのは、医療現場特有の環境や構造に原因があります。

これは個人の性格の問題ではなく、職場そのものが持つ問題として理解することが大切です。

高ストレス環境で生まれる“適応行動”

医療の現場には、次のような厳しい環境が日常的にあります。

  • 常に命に関わる緊張感がある
  • 人手や時間が慢性的に足りない
  • 即座の判断や的確な指示が求められる
  • 冷静で感情を抑えた対応が必要

こうした職場では、以下のようなタイプの人が「有能」と評価されやすくなります。

  • はっきりとした指示ができる人
  • 感情に流されず冷静に対応できる人
  • 自己主張が強く責任感がある人
  • 他人に対して厳しい目を持ち、基準が高い人

このような価値観が強くなることで、職場内での競争や上下関係(序列)への意識が強まり、人間関係のストレスが大きくなりやすいのです。

個人ではなく“構造”の問題と考えることが大切

このような職場で働く理学療法士にとって大切なのは、人間関係のしんどさを「自分のせい」だと抱え込まないことです。

これは職場環境の構造的な問題であり、自分自身が悪いわけではありません。

自分を守るための対処法

今の職場でできる対策としては

  • 感情的にならず、事実に基づいた冷静なコミュニケーションを心がける
  • 自分の専門性や得意分野を明確にして、職場での存在価値をはっきりさせる
  • 職場以外に相談できる人間関係を作ったり、ストレスを発散できる場を確保する

理学療法士が辞める人が多い理由として、人間関係の問題はとても大きな要因です。

自分に合わない職場で無理を続けるのではなく、働きやすい環境を見つけていくことが、長く働くためにはとても大切です。

次は、医療現場特有の女性社会について触れていきます。

医療現場の「女性社会」が生む見えない離職圧力


理学療法士を辞める人が多い理由として意外と見過ごされがちなのが、医療現場特有の女性社会によるストレスです

たとえば…

  • 暗黙のルールや空気を読む力が求められる
  • 裏での評価や噂がプレッシャーになる

こうした環境の中で働き続けることで、精神的な疲れが徐々に蓄積し、「この職場にいるのがつらい」と感じるようになることがあります。

医療現場の女性比率

多くの医療機関では、職員の大半が女性であることが少なくありません。

職種 女性比率 職場での影響力
看護師 約90%以上 現場の中心的存在
医療事務・受付 約80%以上 患者対応の最前線
理学療法士 約60% リハビリ部門
作業療法士 約70% リハビリ部門

この構成によって、女性が多数を占める職場ならではの独特なコミュニケーションや文化が形成されます。

なぜ「女性社会」が離職につながるのか?

医療や介護の仕事は、昔から「人の世話をする仕事(ケア労働)」とされ、社会的な評価や給料があまり高くありませんでした。

そのため、働く人たちは職場の中での立場や評価(序列や承認)によって、自分のやりがいや価値を見いだそうとする傾向があります。

結果として、人間関係の中での競争や緊張感が強くなりやすいのです。

実際に理学療法士が「疲れる」と感じる具体的な場面

暗黙のルールの多さ
  • 「そんなことも知らないの?」という雰囲気
  • 明文化されていない独自の業務手順
  • 新人への「常識でしょ」という圧力
些細なことでの人間関係の変化
  • 休憩時間の過ごし方への無言の圧力
  • グループ分けと派閥の存在
  • 「あの人とは距離を置いた方がいい」的な暗示
感情的な対立への巻き込まれ
  • 直接関係ない人間関係のトラブルに巻き込まれる
  • 「どちらの味方なの?」という踏み絵状態
  • 中立でいることが許されない雰囲気

また、このような環境で男性の理学療法士特有の悩みもあります。

男性理学療法士特有の疎外感
  • 女性同士の会話に入りにくい
  • 相談できる同性の先輩がいない

実際、多くの理学療法士が転職を考えるとき、理由として挙げるのは技術的な問題ではなく、人間関係や職場の雰囲気などの環境面です。

ここで大切なのは、「人間関係がつらい」のは自分の性格が悪いからではなく、職場の構造に問題がある場合も多いということです。

医療現場には、特有のストレスや独自の空気があり、それが知らず知らずのうちに心の負担になることがあります。

理学療法士としての新しい環境・働き方の選択肢

理学療法士の新しいキャリアの選択肢として、放課後等デイサービスへの転職が注目されています

従来の医療機関とは異なる環境で、理学療法士としての専門性を活かせる魅力的な選択肢です。

放課後等デイサービスの特徴

放課後等デイサービスでは、以下のような専門スタッフがチームを組んでこどもたちを支援します。

  • 保育士
  • 児童指導員
  • 心理療法士
  • 作業療法士
  • 理学療法士

一人ひとりの障がいの特性やニーズに合わせた個別支援計画を作成し、こどもたちの発達をサポートしています。

医療機関との働き方の違い

比較項目 医療機関 放課後等デイサービス
目標設定 短期的な機能回復 長期的な発達支援
関わり方 治療中心 楽しみながらの療育
患者・利用者 様々な年代の患者 子どもたち中心
家族との関係 限定的 密接な連携
やりがい 機能改善 成長の瞬間を共有

放課後等デイサービスで働く現実的なメリット

「子どもと関わる仕事にやりがいを感じる」
「成長をサポートする仕事がしたい」

こうした想いは素晴らしいものですがそれだけでは実際にキャリアチェンジに踏み切るには少し勇気が足りない、というのが正直なところではないでしょうか。

だからこそ、今回は「やりがい」だけでなく、理学療法士が放課後等デイサービスに転職することで得られる、現実的で具体的なメリットにフォーカスしてお伝えします。

1. 職場環境の違い

医療機関で多くの理学療法士が感じるストレスから解放される可能性があります。

  • 人間関係の複雑さの軽減・・・医療機関に比べて職種間の上下関係が緩やか
  • 高圧的な職場文化からの脱却・・・厳格な医療現場特有の緊張感が少ない
  • 多職種間の力関係・・・看護師中心の医療機関とは異なる職場構造

2. ワークライフバランスの向上

給与は医療機関より下がる可能性が高いですが、以下のような働きやすさがあります。

項目 医療機関 放課後等デイサービス
勤務時間 早番・遅番・土日出勤 平日夕方中心(学校終了後)
急な残業 患者急変時など多い 比較的少ない
子育て両立 難しい(土日・祝日出勤) しやすい(土日休み多い)
有給取得 取りにくい環境 比較的取りやすい

3. 精神的負担の軽減

  • 生死に関わる責任からの解放・・・医療機関のような重篤な責任がない
  • 家族からのプレッシャー軽減・・・治療結果への厳しい要求が少ない
  • ノルマの質の違い・・・売上重視ではなく、こどもの発達支援が中心

転職時の現実的な判断基準

放課後等デイサービスへの転職を検討する際は、以下の点を冷静に判断することが重要です。

向いている人の特徴

  • 子育て中で柔軟な働き方を重視したい
  • 医療機関の人間関係に疲れている
  • 生死に関わる重い責任から解放されたい
  • 土日祝日を家族と過ごしたい

転職前に確認すべきポイント

  1. 勤務時間の詳細(学校休暇中の対応など)
  2. 給与の詳細(基本給、各種手当、昇給の有無)
  3. 職場の雰囲気(見学時の職員同士の関係性)
  4. 研修制度(児童発達に関する知識習得支援)

放課後等デイサービスのような新しいフィールドでは、理学療法士の専門性が強みとして活かされ、評価される場面が増えています。

「理学療法士としての働き方」を見直し、自分に合った環境を見つけることが、これからの人生をより充実させる第一歩になるかもしれません。

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